養老施設不足が深刻化
2006年(平成18年)8月7日(月)日刊工業新聞掲載・中国の福祉・シルバー市場(第二弾)
レポート・楊軍(ヤン・ジュン)
海外窓口担当:国際マーケティングサービス「中国国際福祉博覧会」(TEL03-3555-0555)
<<養老施設不足が深刻化>>
逆ピラミッド型
「老吾老、以及人之老」とは中国の古代思想家、孟子の言葉。「まず自分の親と家系の年長者を敬愛し、それをほかの家庭の年長者まで広げよう」という意味だ。この言葉が象徴するように「老人」は家庭や社会でも最も尊敬されるべき存在として、その子孫が責任を持って扶養の義務を果たすことが当然の「孝行」とされてきた。ところが近年、この固有観念と親の孝行の形が大きく変わった。高齢化が進み、また79年以来の一人っ子政策で、家庭が少人数になったことが背景にある。これにより第1代の一人っ子家庭が「4-2-1」の逆ピラミット型の扶養パターンに直面している。一人っ子家庭では、夫婦2人が子供1人と4人の老人を扶養することになる。
急増する“空き巣家庭”
しかし、夫婦2人が働きながら家庭で「孝行」するのは「力不足」で、くじけてしまうケースが続出。高齢者だけで生活する「空巣家庭」(子供が巣立ち、年をとると、全家庭の22%が65歳以上の高齢者の空巣家庭で、北京市では45万世帯を突破。養老問題は社会問題になっている。
施設活用も親孝行
従来、親を施設に入れることは「無責任」「親不孝」「家庭不仲の表れ」として軽蔑されてきたが、時代の変化で今や養老施設は中国の特徴である「高齢化社会&一人っ子社会」にかなう親孝行として多くの人々に認められてきた。自宅での伝統的な「養老方式」は崩れ、社会全体で養老問題に取り組む「融和型養老」の観念を導入せざるを得なくなったわけだ。
日本の老人ホームのような「養老院」「敬老院」「福利院」、さらには老人マンション、日中預かる託老所など、さまざまな中国式養老施設が現れている。05年の統計によると、養老院は都市部には8553カ所、農村部には2万カ所ある。
これは北京市の事例。半身不随と認知症で寝たきりの母親に、実業家の息子が2人いる。親孝行の2人は出費を惜しまず、自宅で家政婦を3人雇っていたが、母親の病が一向に好転せず、床ずれもできてしまった。
悩んだ末、2人の息子は母親を市内一流の養老院に預け、時間がある限り養老院に通い、団らんの時間を設けるようにした。 専門家と専門設備による介護やリハビリの効果でやがて母親の床ずれは完治し、自力でトイレもできるようになるほど、半身不随や認知症に回復の兆しが見え始めた。
「僕らにはどうすることもできなかったことを、養老院がしてくれた。やはりプロが一番と、息子らは感激した。
入れない人気施設
医療設備・福祉機器の完備、専門家の介護、心のこもったサービス。この三つが良い養老施設の条件で、人気の施設は入りたくてもなかなか入れず、供給が需要に遠く追いつかない状況が顕著になってきた。中国の養老市場は生活者の購買力向上に伴い、今後、世界最大規模になることは間違いない。すでに外資系企業が算入計画を着々と進めている。
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中国福祉市場メモ
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優遇措置で民間運営促進
中国の65歳以上の高齢者人口は90年から2020年にかけて年平均3.3%ペースで増え、世界の平均伸び率2.5%を上回る。2020年の中国の高齢者は推計1億6700万人。同国政府は養老施設の民間運営を促すため、土地取得や貸付面などで優遇装置を講じている。だが現在、民間の施設運営会社は1300社、入居者は20万人で、国営施設の入居者と合わせても220万人にしかならない。高齢者全体に占める比率は1.5%で、先進国の5-7%と開きがある。外資への市場開放は04年。ドイツ最大の養老施設を運営する「Augutinum」が、
上海龍君置業と合併で上海国際医学園区康複区に養老院を建設する。第1期500戸が08年までに完成。
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